FIREの失敗確率とは?破産リスクを数字で知る方法と下げ方
「4%ルールなら大丈夫」と言われても、本当に自分のケースで資産が尽きないのかは不安なものです。そこで役立つのが「破産確率」という考え方です。平均値ではなく"確率"でリスクを捉える方法を整理します。
1.破産確率とは
FIREにおける破産確率とは、「リタイア後の一定期間(たとえば30〜40年)のあいだに、資産を取り崩しきって残高がゼロになってしまう確率」のことです。同じ資産・同じ取り崩し額でも、相場の動き方しだいで「資産が尽きる未来」と「尽きない未来」の両方があり得ます。その"尽きてしまう側"がどれくらいの割合かを示すのが破産確率です。
例:10,000通りの将来シナリオを試算して、そのうち600通りで資産が尽きた場合、破産確率は 600 ÷ 10,000 = 6% となります。
2.破産確率と生存率は表裏
破産確率と表裏一体なのが生存率です。生存率は「期間の最後まで資産が残った(破産しなかった)シナリオの割合」で、次の関係になります。
破産確率 = 100% − 生存率
生存率92% なら 破産確率は8%
つまり両者は同じ結果の言い換えであり、どちらか一方が分かればもう一方も決まります。当サイトのシミュレーターでは両方が表示されますが、見ているものは同じです。
判断するときは破産確率側で考える
安心感を確かめたいときは生存率、リスクを取るかどうかを判断したいときは破産確率で考えるのがおすすめです。「生存率95%」と聞くとほぼ安全に思えますが、「20回に1回は資産が尽きる」と言い換えると印象が変わるはずです。パーセントを「何回に1回」という頻度の言葉に直すと、自分が引き受けようとしているリスクの重さを直感的につかめます。
| 生存率 | 破産確率 | 頻度に直すと |
|---|---|---|
| 99% | 1% | 100回に1回 |
| 95% | 5% | 20回に1回 |
| 92% | 8% | およそ12回に1回 |
| 90% | 10% | 10回に1回 |
一般的には生存率95%以上(破産確率5%以下)が、ひとつの安全圏の目安とされます。ただし後述のとおり、許容できる水準は年齢や立て直しやすさによって変わります。なお、画面に表示される中央値・パーセンタイル・資産推移グラフなど他の指標の読み方はFIREシミュレーション結果の見方で解説しています。
3.平均利回りの計算では破産確率が見えない理由
「年平均5%で回るから大丈夫」といった平均値だけの計算は危険です。理由は2つあります。
1本道の計算は、答えが0%か100%にしかならない
平均5%を毎年そのまま当てはめる計算は、将来をたった1本の道として描きます。1本の道の上では、資産は「最後まで持つ」か「途中で尽きる」かのどちらか一方に決まってしまうため、その計算が出せる破産確率は0%か100%のどちらかしかありません。「8%の確率で失敗する」といった中間の答えは、原理的に出てこないのです。破産確率という数字は、リターンの振れ方が異なる多数のシナリオを試して、初めて姿を現します。つまり平均利回りの計算で「大丈夫」という結果が出ても、それはリスクがゼロという意味ではなく、リスクを測る物差しを最初から持っていないだけなのです。
同じ平均でも、暴落の「順番」で結果が変わる
株式市場のリターンは毎年大きく振れます。たとえばリーマン・ショックの2008年、MSCI ACWI(全世界株・円建て)の年次リターンは約-53%でした。同じ「平均5%」でも、こうした暴落がリタイア直後に来るか、終盤に来るかで結果はまったく変わります。
リタイア直後の暴落で資産を大きく減らすと、その後に相場が回復しても元本が足りず、取り崩しに耐えられなくなります。これをシーケンスリスク(収益率配列リスク)と呼びます。平均利回りの単純計算ではこのリスクを捉えられないため、確率で考える必要があるのです。
4.モンテカルロ法で破産確率を試算する
破産確率を求める代表的な方法がモンテカルロシミュレーションです。過去の年次リターンの分布をもとに、暴落の順序が異なる将来シナリオを何千・何万通りも生成し、「資産が尽きた割合」を数えます。
当サイトのFIREシミュレーターでは、過去37年(1988〜2024年)のMSCI ACWI(全世界株・円建て)の年次リターン実績、または自由設定の年利をもとに、10,000通りの将来シナリオを生成して破産確率・生存率を算出します。手順はかんたんです。
- 初期資産・取り崩し額・運用期間を入力する
- 「▶ 実行」を押す
- 結果のKPIに表示される「生存率」「破産」の回数を確認する
- 取り崩し額や債券比率を変えて、破産確率がどう変わるか比較する
5.許容できる破産確率の考え方
「破産確率は何%までなら許容できるか」に、全員共通の正解はありません。鍵になるのは、失敗の兆しが見えたときに立て直せるかどうかです。判断軸は主に3つあります。
- 年齢:若いほど、働いて稼ぎ直せる年数(人的資本)が多く残っています。
- 再就職のしやすさ:スキルや職種、ブランクの長さによって、収入を回復できる見込みは大きく変わります。
- 固定費の柔軟性:住居費などの固定費を下げて生活を縮められる人は、計画が狂っても支出側で調整できます。
| 状況の例 | 許容の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 30〜40代・再就職しやすい・固定費を下げられる | 10%程度まで許容も合理的 | 失敗の兆しが見えた段階で働き直し、計画を立て直せる余地が大きい |
| 40〜50代・再就職に不確実さがある・固定費は中程度 | 5%前後 | 立て直しの選択肢はあるが、年齢とともに狭まっていく |
| 60代以降・再就職が難しい・固定費を下げにくい | 5%未満(できれば数%以下) | 失敗時の挽回手段が限られ、打撃がそのまま生活に直結する |
また、同じ破産確率でも「いつ資産が尽きるか」によって失敗の重さは変わります。年金受給が始まったあとに尽きるのか、働き直しも難しい時期に尽きるのか――この見極めには、結果画面に表示される「破産年齢の中央値」が手がかりになります(指標の読み方は結果の見方を参照してください)。
破産確率は、リタイア時に一度だけ確認して終わりの数字ではありません。リタイア後も年に一度は再試算し、確率が悪化していたら早めに手を打つ。「早期警戒の指標」として使い続けるのが本来の活かし方です。
6.破産確率を下げる4つの手段と効きの比較
破産確率が許容水準を超えていたら、条件を調整します。代表的な手段は4つあり、それぞれ「なぜ効くのか(作用機序)」が異なります。
| 手段 | 作用機序 | 効き方の特徴 |
|---|---|---|
| ① 取り崩し額の引き下げ | 毎年の資産流出そのものを減らす | 相場の良し悪しに関係なく全シナリオ・全期間に等しく効く。効きが最も素直で大きい |
| ② 開始年齢の繰り下げ | 運用・入金の期間が延びて開始時の資産が増え、同時に取り崩す年数が減る | 1つの操作で「入口」と「出口」の両方が改善する二重の効果 |
| ③ 現金クッション | 暴落時は現金から使い、株式を安値で売る「損失の確定」を避ける | 平常時の効果は小さいが、破産の主因である序盤の暴落に的を絞って効く保険型 |
| ④ 労働収入の併用 | 収入の分だけ取り崩しが減るのと同じ | ①と同じ機序を、生活水準を落とさずに実現できる。健康や仕事の確保に左右される |
①の効きが大きいのは、取り崩し額が「相場に関係なく毎年確実に出ていくマイナス」だからです。たとえば月2万円(年24万円)の引き下げは、30年間の単純合計で720万円の流出減になり、運用が不調なシナリオほど相対的に大きく効きます。②は、繰り下げた年数だけ「資産が育つ期間」が延び、「資産を使う期間」が縮むため、1〜2年の繰り下げでも破産確率が目に見えて動くことの多い手段です。
③の現金クッションは、生活費の1〜2年分などを株式とは別枠の現金で持っておく方法です。破産シナリオの多くはリタイア直後の暴落から始まるため、その局面に限定して守りを固めます。④のサイドFIREは、月数万円の労働収入でも年間では数十万円の取り崩し減に相当し、「相場が悪い時期だけ働く」といった柔軟な使い方もできます。
どれから試すか
まず効きの大きい①取り崩し額と②開始年齢で大枠の当たりを付け、③現金クッションで悲観シナリオの谷を埋め、それでも足りなければ④労働収入を検討する、という順番が考えやすいでしょう。このほか、資産残高に応じて取り崩し額を変える取り崩し戦略の工夫や、税金・社会保険料を含めた必要額を厚めに見積もることも補助的に効きます。シミュレーター上でどの入力欄をどう動かし、結果の数字をどう確認するかという画面操作の手順は結果の見方にまとめています。
破産確率は「自分の条件」で初めて意味を持ちます。一般論の4%ルールではなく、ご自身の資産・取り崩し額・運用期間でシミュレーターを回し、納得できる確率まで条件を調整してみてください。数字以外も含めたよくある失敗の全体像はFIREの失敗パターン7選と対策にまとめています。
この記事の執筆者:yamano(個人投資家・投資歴28年)
自身のFIRE計画を検証するために当サイトのシミュレーターを開発・運営。前提を明示し、根拠を確かめながら試算できる情報提供を方針としています。くわしくは運営者情報をご覧ください。
最終更新日:2026年6月12日