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FIREシミュレーション結果の見方|生存率・破産確率・中央値とは

シミュレーターを実行すると「生存率」「破産確率」「中央値」など、いくつかの指標が表示されます。それぞれが何を意味し、どう判断すればよいのかを解説します。

1.モンテカルロ法とは

将来の株価は誰にも正確には予測できません。そこで、過去のリターンの分布などをもとに「ありえそうな1年のリターン」をランダムに選び、それを運用年数ぶん積み重ねて1本の人生シナリオを作ります。これを何千〜何万回も繰り返し、結果のばらつきを統計的に把握する手法が「モンテカルロ法」です。

当シミュレーターでは10,000通りのシナリオを生成します。1回の予測ではなく「確率の分布」で将来を捉えられるのが特徴です。仕組みの詳細はモンテカルロシミュレーションとは?で解説しています。

2.生存率・破産確率

指標意味
生存率全シナリオのうち、設定した年数の最後まで資産が尽きなかった割合。高いほど安心。
破産確率途中で資産が尽きてしまったシナリオの割合。生存率の裏返し(生存率 = 100% − 破産確率)。

一般に、生存率が95%以上であれば比較的安全圏とされることが多いです(トリニティスタディの成功率の考え方に近い)。ただし、許容できるリスクは人によって異なります。

3.中央値とパーセンタイル

資産額の「平均」は、一部の極端に大きいシナリオに引っ張られて実感とズレることがあります。そこで役立つのが中央値(メジアン)です。

  • 中央値:全シナリオを資産額の順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値。「最もありそうな真ん中のケース」の目安。
  • パーセンタイル:下から数えて何%の位置か。たとえば「10パーセンタイル」は、下位10%という悪いケースを表します。

当シミュレーターでは、破産したシナリオも資産0として母数に含めて算出するため、生存したケースだけを見て楽観的になりすぎることを防いでいます。

4.悲観/標準/楽観の3水準の使い方

資産推移グラフでは、10,000通りのシナリオのばらつきを3本の線で表現します。当シミュレーターの3水準は、それぞれパーセンタイルに対応しています。

水準位置見方
悲観(P10)10パーセンタイル10,000シナリオを資産額の順に並べたとき、下から1,000番目の推移。相場が振るわなかった「悪いケース」。
標準(P50)中央値ちょうど真ん中のケース。半分のシナリオはこの線を下回ります。
楽観(P90)90パーセンタイル下から9,000番目の推移。相場に恵まれた「良いケース」。

計画は悲観側で立てる

3本の線のうち、生活設計の土台にすべきは悲観(P10)です。P10は「10回に1回程度は、これと同じかそれより悪い展開になる」という水準であり、数十年におよぶリタイア生活では十分に起こり得る範囲だからです。悲観線でも生活が破綻しない計画にしておけば、実際の将来が標準や楽観に近づいたとき、その差はそのまま余裕として残ります。

逆に、楽観(P90)は「上振れしたらこうなる」という参考情報にとどめましょう。楽観線を前提に支出計画を立てるということは、10回のうち9回はそれを下回る結果になる前提で生活を組む、ということを意味します。

悲観線の「形」にも注目する

悲観線で確認したいのは、最終的な金額だけではありません。どの時期に大きく落ち込むか、落ち込んだあと横ばいに戻るのか、ゼロへ向かって一方的に減り続けるのか、といった「形」も重要です。序盤に深く落ち込む形なら、リタイア直後の暴落に弱い計画だと分かります(この弱点の正体はシーケンスリスクの記事で解説しています)。

5.破産年齢の中央値の読み方

結果画面には「破産年齢の中央値」という指標も表示されます。これは誤読されやすい数字なので、定義を正確に押さえておきましょう。

破産年齢の中央値は、「破産したシナリオだけ」を取り出し、それぞれが破産した年齢を順に並べたときの真ん中の値です。全シナリオに対する予想ではありません。

例で確認します。生存率92%(破産確率8%)なら、10,000シナリオのうち破産するのは800本です。破産年齢の中央値が「78歳」と表示された場合、それは「この800本の失敗シナリオの中では、78歳前後で資産が尽きるケースが真ん中」という意味です。残りの9,200本では、そもそも破産は起きていません。

「破産年齢の中央値が78歳=自分は78歳で破産する見込み」という読み方は誤りです。この数字は「もし失敗する側に入ってしまった場合、いつごろ危機が来るか」を知るためのものです。

何の判断に使えるか

破産年齢の中央値は、失敗したときの「立て直しやすさ」を測る材料になります。たとえば中央値が60歳前後なら、失敗が現実になっても再就職などで収入を立て直す余地が残っています。一方で80歳前後なら、働き直しは難しい反面、公的年金の受給が始まっているため、資産が尽きても年金収入が生活の下支えになります(年金との関係はFIREと年金で整理しています)。同じ破産確率でも、「いつ尽きるか」によって失敗の重さは大きく変わるのです。

なお、資産が何年持つかという「資産寿命」の視点からの整理は資産寿命の考え方が参考になります。

6.よくある読み間違い

結果画面の数字は、読み方を誤ると判断そのものを誤らせます。特に多い3つの読み間違いを挙げます。

① 生存率95%を「ほぼ確実」と読む

生存率95%は、20回に1回は資産が尽きる側に入る水準です(90%なら10回に1回)。人生は一度しかやり直せないため、「20回に1回」を小さいと見てよいかどうかは、失敗したときに立て直せるかどうかとあわせて考える必要があります。どこまでの失敗確率なら受け入れてよいかという基準の立て方は、FIREの失敗確率とは?で詳しく扱っています。

② 中央値を「自分の予想額」と読む

中央値は10,000シナリオの真ん中の値であって、あなたの将来の予想額ではありません。定義上、半分のシナリオは中央値を下回ります。「中央値で1億円残る」という結果でも、悲観側ではその何分の一かにとどまる展開が普通にあり得ます。中央値は将来の約束ではなく、「条件を変えたとき結果がどちらへ動いたか」を比べるための基準点として使うのが適切です。

③ 1回の試算結果を絶対視する

表示される数字はすべて、入力した前提(年利の元データ・インフレ率・期間など)の上に成り立つ条件付きの試算です。前提が変われば結果も変わりますし、過去データに基づく以上、将来が過去の範囲に収まる保証もありません。1回の結果で「合格/不合格」を決めるのではなく、前提を少しずつ変えて何度も実行し、「どの範囲の条件なら耐えられるか」をつかむのが正しい使い方です。

7.結果を見た後の動かし方

生存率が目標(たとえば95%)に届かなかったら、入力を調整して再実行します。代表的な調整手段と、結果への効き方の目安は次のとおりです。

動かす入力動かし方結果への効き方
年間取り崩し額減らす毎年の資産流出が全期間にわたって減るため、生存率への効きが最も直接的。月1〜2万円の差でも数十年の累積では大きい。
取り崩し開始年齢遅らせる運用と入金に充てる期間が延び、取り崩す年数が減る「二重の効果」。1〜2年の繰り下げでも結果が目に見えて変わることが多い。
現金クッション厚くする暴落直後に株式を安値で売る事態を避け、悲観線の落ち込みを和らげる(現金クッション)。
労働収入一部残す収入の分だけ取り崩しが減るのと同じ。完全リタイアにこだわらない選択肢(サイドFIRE)。
取り崩し方式定額→定率資産が減った年は取り崩し額も自動で減るため尽きにくくなる。一方で年々の生活費は変動する(定額と定率の比較)。

調整の手順

  1. 入力は1つずつ変えて実行し、生存率がどれだけ動いたかを記録する。どの手段が自分の条件に効くか(感度)が分かります。
  2. 生存率が目標に達したら、悲観(P10)の線を再確認し、最悪に近い展開でも生活が成り立つかを見る。
  3. 仕上げに、インフレ率や年利の前提を変えて、前提が崩れたときの影響も確認する。

数値はあくまで一定の仮定に基づく試算です。将来を保証するものではありません(免責事項)。複数の条件で繰り返し試して、結果の動き方の感覚をつかむことをおすすめします。

この記事の執筆者:yamano(個人投資家・投資歴28年)
自身のFIRE計画を検証するために当サイトのシミュレーターを開発・運営。前提を明示し、根拠を確かめながら試算できる情報提供を方針としています。くわしくは運営者情報をご覧ください。

最終更新日:2026年6月12日